携帯カメラの望遠で撮ったためかなりぼやけているがホールでグランドピアノを弾く少女の写真にイネ=ノが反応した。
「あ…これは…僕の母がピアノ教室をやっていて…そこの生徒さん。天妙寺秋桜ちゃんって言うんだ」
何だろう…その名前を口にして照れている自分がいた。
「テンミョウジコスモス…」
イネ=ノが名前をつぶやいてみせる。
もしや女性の好みは僕と同じなんだろうか?思わず次の写真に画像を進めた。
「そうだ…竹人に一つ頼みたいことがあるんだけどいいかな?」
「え?なに?」
「明日僕と一緒に来て患者の前でバイオリンを弾いてみてほしいんだ。
村人と同じように心に病を抱えていてね…
残念ながらキク=カは症状が違うから効果が見られなかったけどもしかしたらと思って」
「いいよ」
快く話を受ける。
「僕なんかのバイオリンで誰かの病気が治るんならいくらだって弾いてあげるよ」
「ありがとう」
そこで扉の向こうから上品なノックが聞こえた。失礼しますといってアキレスが入ってくる。
「食事はいかがしましょう」
「ああ…じゃあ…庭で頂こうか」
「かしこまりました」
軽くお辞儀をして一度アキレスは部屋から出て行った。
「庭で星や花に囲まれての食事も綺麗だよ」
そういいながらイネ=ノはソファからそっと立ち上がると僕を庭へと案内した。
「そうだ…キク=カからもらった花の種…もう間に合わないなぁ…」
「ああ…そういえば…」
昨日キク=カからもらったガラスの金平糖のような花の種のことだ。
「持って帰っても大丈夫かな?」
「うーん…どうなんだろうか…」
イネ=ノも首をかしげる。
「持って帰っても環境が違うだろうから育たないかもしれないよ。
それに何かしらの悪影響を及ぼしたら大変だ。申し訳ないけど持って帰るのはやめておいたほうがいい。」
「そうか…それもそうだね…残念だけど。
じゃあ…今この庭に植えても良いかな?
僕は開花を見届けることが出来ないけれどその代わりをイネ=ノにお願いしたいな」
「解った。じゃあ…こちら側なんてどうだろう」
軽く芝生のような背の低い草が生えている辺りを指していった。
「よし…じゃあ…」
部屋に戻り昨日もらった巾着を取り出すと小走りで庭に戻った。
ちょうど近くに落ちていた棒切れで種を撒く穴を作る。
「何をしてるんだい?」
僕のその様子を不思議そうに見守りながらイネ=ノが言う。
「種撒くんだろ?」
「ああ…君の世界ではそうやるのかい?光花はね、こうするんだよ。」
巾着から種を少し取り出すとそれを空にばら撒いて見せた。
「え?」
キラキラと光は舞いまるで雪のように静かに土の上に舞い降りて言った。
土がキラキラと光り輝やき、
やがてその輝きが少しずつ増してきたかと思うとまるで光ファイバーのような芽がひょろりと土から伸び始めたのだ。
「す…すごい!!」
思わず手を叩いて喜んだ。
光ファイバーの管のところどころからガラスのように七色に透き通った葉があちこちにでき少しずつ膨らみだす。
「まるで…魔法でも見ているかのようだよ…綺麗だなぁ…」
「竹人も撒いてごらん」