第九章:消えゆくもの(2-1)

「今…なんて…」
聞き返さずにはいられない。
「大神の怒りをかい、あのようなことに…」
イネ=ノは下を俯いてなぜか悔しそうな顔をした。
やはり聞くべきではなかったのだろうか…。何も言えず僕も黙り込んでしまう。
これ以上詮索しないほうがいい。僕もあまり体調がよくない。重い話を受け止めるほどの元気は余っていなかった。
「この川の向こうは銀河系の中心なの?」
話題を変えることにした。
突然話をころっと変えたので一瞬イネ=ノは驚いた顔をしたがまたすぐにあの穏やかな笑顔に戻る。
「そうだよ。この先にも宮殿がある。」
「すごいね。じゃあ銀河中に宮殿があってそこにそれぞれ神様がいるんだ。」
「ああ…全員に会った事はないけれど星座や場所によっていろいろと勝手が違っていて行ってみるととても面白い。
星が全部迷路のような造りをしているところがあってね、宮殿も迷宮で行くたびに道が変わるからいつも迷ってしまうんだ。」
「面白そう!でも急ぎのときは困るね」
笑いながら再び出口に向かって歩き始めた。
「あとは全てが水の中にある世界とか色々あるよ。
竹人の帰る日がもう少し先だったらいくつか案内できたんだけど…
明後日には帰ってしまうのか…寂しいよ。」
たしかに…ここでの3日間は非常に濃厚なものだった。
もう二度と経験する事はないだろう。この夢もあと2日で終わろうとしている。
終わりが近づいていると感じるとやはり名残惜しくなってしまう。
「僕もだよ」
風の道を通り抜け射手座の宮殿へと舞い戻ったころには空はすっかり暮れていた。
今日は日がたつのが早く感じる。僕の部屋につくとイネ=ノは僕の肩をぽんと叩いて見せた。
「疲れているだろ。少し休むといい。
僕はもう少しだけ仕事が残っているからそれを片付けてくるよ。」
夕食はまた一緒に食べようと言うとイネ=ノはまた姿を消してしまった。
ベッドの上に着替えが置かれいたのでそれに着替える。
「お疲れ様です。キク=カ様の宮殿はいかがでしたでしょうか?」
アキレスがお茶を持って現われた。
「ああ…アキレス。うん、宮殿によってずいぶんと勝手が違うんだね。
うさぎが門番をやっていたのには驚いたよ。」
「うさぎ?」
アキレスが驚いた表情を見せる。ああ…アキレスは行ったことがないのか?
「そう、うさぎ。最初木の彫刻かと思ったら近づいたとたん突然動き出してね、いやー、本当に驚いたよ」
するとアキレスは突然目を逸らし考え込むようなしぐさをして見せた。
「アキレス?」
「あ、いえ…珍しいなと思って…僕も会ってみたい」
ハハハと笑うとテーブルの上にティーセットを準備してみせた。
ティーポットもティーカップもガラスでできていてティーポットの中には何かキラキラと輝く宝石のようなものがたくさん入っていた。
「今回はこちらの宮殿でよく飲まれているものをお淹れしました。
どうぞお召し上がりください。癒されますよ。」
「ありがとう」
ティーポットからキラキラなお茶が注がれた。一口、口をつける。

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