「キク=カから一通り聞いたんだよ。
変わった名前の飲み物だなとは思ったんだが、花の種で作るお茶のことだったんだね。
キク=カのところにたくさん植物があってたまたま似たような品種の花があったんだ。
それでお茶を淹れさせてみたんだよ」
「そうだったんですか…とてもおいしいです。」
にこりと微笑んで見せた。
そのキク=カと言う人物、かなり強い力を持っているようだ。
これならもしかすると本当に元の世界に戻れるかもしれない。
「そうだ…」
そう言ってイネ=ノは席を立ち上がりクリスタルガラスのテーブルの前まで歩いてとまった。
バイオリンケースに手を置いて言う。
「僕も一度この音色を聞いてみたいんだけど、演奏してくれないかい?」
「え?ああ…はい。」
そう言って立ち上がるとバイオリンケースのところまで行く。
あれ?そこで気がつく。
僕よりもイネ=ノのほうが頭1つ分以上背が高かったのだ。
にこりと微笑むイネ=ノ。
思わず僕もつられて微笑んで見せた。ケースを開ける。
「おお…なんと美しい」
渋い琥珀色のバイオリンを見てイネ=ノが声を上げて喜ぶ。
「これはバイオリンという楽器です」
ケースから取り出し持ち上げて見せた。肩当てを本体に取り付け弓を出し構える。
「どういった曲がお好みですか?」
すると少しだけイネ=ノは首をひねって考え込むポーズをしてみせた。
「そうだなぁ…じゃあ病人の前で弾いたという曲を聴いてみたい」
そこで僕はメグサの母親の前で弾いたタイスの瞑想曲を演奏し始めた。
穏やかに、緩やかに旋律は弦の上を流れるように走る。
窓からこぼれる日の光が音色にかき混ぜられるようにきらきらと反射しているように見えた。
その中を音色にあわせて蝶が舞った。
なんと水彩画のような幻想的な景色なのだろう。
僕は思わず演奏しながらその淡い景色に見とれていた。
やがて4分ほどの曲が静かに終わる。
弾き終わり弓を下ろす。
イネ=ノはいつの間にソファの肘掛に腰を下ろしてとてもうれしそうに目をキラキラさせていた。
「すばらしい…!!
なんて優雅な音色なんだ!
そのような音色は初めて聴いたよ!!
神玉の指輪をしているだけはある。
やはり君は選ばれし者だったんだ!」
「あ…有難うございます。」
そこまでほめられるとさすがに恥ずかしくて照れてしまう。
「良かったら弾いて見ますか?」