第七章:神様の僕(2-5)

「どういうことですか?」
「最近君が現われた村周辺で奇病が発生していてね、
強い精神的ショックで心が壊れ失明する病気さ。
君も患者に会っているはずだよ。
瞳の色が黒く変化しいずれは失明し心も壊れてしまう。」
“心が壊れる”…。
メグサや女の子も同じ事を言っていた。
「あの…心が壊れるって…
精神崩壊みたいなものですか?村でその病気の話を聞いたとき“心に強い痛みが生じる”って聞きました。
それはどういうことなんでしょう」
蝶が舞った。
ひらりひらりと舞いながらやがて僕の飲んでいたティーカップのソーサーまで来てとまった。
「君の世界とはいろいろと勝手が違うみたいだ。
君の世界では“心が壊れる”という表現はまた違う意味みたいだね。
こちらでは、肉体が滅びるのと同一なんだよ。
心が壊れる、
つまり肉体が滅びてゆく恐ろしい病気なんだ。
体の感覚が徐々に麻痺しまず第一症状として笑顔を失う。
次に全ての表情を失い寝たきりになる。
やがて末期になると瞳から脳内にあった全ての記憶がこぼれだし失明し
心、つまり体が腐り、最後死に至る。」
そんな…そんな恐ろしい病気だったのか。
じゃあ…メグサのお母さんはかなりひどいところまで病状が進んでいたことになる。
「新宮の者たちに調べさせていたんだけどね、
なかなか難しい病気で簡単には治せない。
それを君は楽器一つで糸も簡単に治してしまった。
やはり僕らが瓜二つなのと言いその指輪といい何か関係していると思わざるを得ない。」
「あの…僕の世界でこのバイオリンを弾いても病人は完治しません。
音楽療法のような事はやっていましたが気休めにすぎません。
なのに、なぜこちらの世界だとそんな力が出るのか、僕にもよくわかりません」
「だろうね。
君がこの世界にいるというだけでも信じがたいというのに。
いや…はじめてなんだよ。
異世界から誰かが渡って来ただなんて僕は生まれてこの方一度も耳にしたことが無い。」
「そういえば…あの……、
金髪で緑色の瞳をした白人男性に心当たりはありませんか?」
「え?」
「この世界に来る直前、
その人に出会って道案内されたんです。
その道をたどったら、気がついたらこちらの世界に来ていました。
もしかしたら何か関係があるのかもと思ったのですが」
「うーん…金髪緑眼の白人男性といわれても…
この世界にはそのような者が大勢いるからね…特定は難しいかな」
「そうですか…」
確かに情報が少なすぎたかもしれない。
「その話も後でキク=カの前、
おっと失礼、蠍座守護神の名前がキク=カというのだが彼の前でも話してもらえるかい?」
「はい。わかりました」
僕は素直に返事をするともう一度カップに口をつけた。一口飲む。
「あ、そういえば、どうして僕がカモミールティーを持ってきた事を知っていたんですか?
村であった女の子以外誰にも話していないのに。」

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