第七章:神様の僕(2-4)

「君がこの世界に来る事を知ってね、この子に探させたんだ。
うまく君を見つけることができたんでね、
周辺の町に記憶喪失になった僕がいるから保護して宮殿につれてくるように伝えたんだ。
途中うまく話しが伝わってなかったみたいで君をひどい目に合わせてしまったね。
そこは申し訳なく思うよ」
「いえ……そうだったんですか…」
神様が記憶喪失でその辺を歩いている…なんて突拍子も無い…。
「たしかにちょっと無理のある筋書きではあったけれどね、
残念ながら小さな村で僕の顔を知っているのは兵士ぐらいだからね。
神宮の者がいればよかったのだが土地が広すぎて全てを管理しきれないのが現状でね、
少々情けなくもあるがなんとか君を見つけることができてほっとしているところでもあるよ。」
「あ…そういえば」
そういいながら僕は左手の小指にはめてある指輪を見せた。
「この世界に来たらいつのまにかこれが指にはまっていたんです。
兵士や村人たちがこれをみて何か言っていました。
これは一体なんなんでしょう?」
「ああ、これね」
そういいながらイネ=ノも自らの左手を差し出した。
小指には僕とまったく同じ指輪がある。
「左手小指に指輪をはめるのは神、もしくは神宮、つまり神の使いである事を指している。
石の付いている指輪が神、石の付いてないものが神宮、つまり神の使いである事を示しているんだが、
村人はそこまで詳しく知らなかったんだろう。
君を神宮と勘違いしたみたいだね。
さすがに兵士は知っているはずだから君を拷問にかけたときそれに気づいてかなり焦ったみたいだよ。
まさか自分が神様を拷問にかけてるなんて夢にも思わないからね。」
それで指輪にあんなに反応してたんだ。
「あ、でもちょっと待ってください。
僕は神様でも神様の使いでもなんでもないのに、なんで指輪をしているんですか?」
「そこなんだよ。
射手座守護神は僕一人しか存在しないはずなのにもう一人、異世界から同じ指輪をしたものが現われた。
何故だろうか。
それを僕も知りたくてね、君をこうしてここへお連れした訳なんだ。」
そうだったのか…イネ=ノも全てがわかっていたわけではなかったんだ…。
少し愕然としたがとりあえず身の安全が確保されただけでもこの場はよしとしておいたほうがよさそうだ。
「明日、君の事を話してくれた人に会いに行くから君にも一緒に来てほしいんだ。」
「え?あ…はい…」
「その人は蠍(さそり)座守護神でね、予知能力がある。君が来ると予知して僕に教えてくれたんだよ。」
「予知能力…」
少し神様めいて来たような気がした。
「あ…じゃあ…あなたにはどんな力があるのですか?」
手のひらで蝶を遊ばせていたイネ=ノは僕の質問ににやりと口の端で笑って見せた。
「医術だよ。
人や神の病を癒す力を持っている。
だが君にもどうやらその力があるようだ。その楽器でね」
イネ=ノの手のひらの中で遊んでいた蝶はふわりと
舞い僕のバイオリンケースの前まできてその周辺をひらりひらりと飛び回った。

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